ほぼ日刊ヒトミ通信

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  将棋
2017年08月02日 (水)

藤井四段の29連勝のおかげで将棋界が随分盛り上がっておりますが、私自身は全く将棋は指しません。理由は「負けると悔しい」からであります。麻雀なら「運が悪かった」とかなんとか言えますが、将棋は全て自分の責任、負けたら自分が弱かった以外理由がない、それがいやなんですね。

もちろん子供のころはやりました。時代はファミコン前夜、室内での子供の遊びはトランプとオセロと将棋くらいしかありませんでしたし、つのだじろうさんの「5五の龍」なんか読んだりして結構はまっていたかもしれません。

中学以降は主に麻雀とゲーム専門でしたが、大学時代の最初の下宿が米長邦雄さんの家の近くで、馴染みのトンカツ屋さん(将棋好き)でプロ棋士(当時三段の故伊藤能氏)と友人になったり、羽生っていうとんでもない強い奴がでてきたなんて言う話で盛り上がってたりしたので、指しはしないけど、興味は継続して持っていました。

特に最近は昔の対戦をユーチューブで見ることができるので、「有名な一局」、「世紀の一手」をいつでも楽しむことができるのはありがたいですね。

その中でも、私が断然お勧めするのが、羽生三冠を一躍有名にした1988年のNHK杯、相手は藤井4段のデビュー戦以降妙にテレビに出ている「神武以来の天才」加藤一二三さん。伝説の「5二銀」が出た一局です。

この解説をしていたの米長さんで、この三人の組み合わせ、特に米長さんの解説が抜群なので、ご興味ある方は是非ともググって映像見てみてください。更にこの時の対局を振り返った番組もあって、それも傑作です。

「加藤さんの心中察するに、『こんなに強いとは』って感じじゃないですか。でもねぇ、加藤さん自身がデビューした頃はそうだったんだよ。みんなそうやってやっつけてきたんだよ。遂に自分に順番がまわってきたってことですね」

そんな米長さんが、コンピューター相手に一世一代の勝負をかけたのが2012年の「ボンクラーズ」との一戦でした。そしてその勝負について詳細に書き記した「われ破れたり」を編集工学の松岡さんが取り上げています。

既に引退して衰えていた棋力を、万全・周到な準備によって、互角に戦える状態まで持っていった後、最後に奥様に尋ねる場面が最高です。

<ココから>

だいたいこんなことを決めて臨むことにしたのだが、最後の仕上げが残っていた。女房に「俺は勝てるだろうか」と聞くことだ。

 女房は将棋についてはルールがわかる程度で、ふだんは意見を聞いてもナンの役に立たないのだが、だからこそ「あなたなら大丈夫でしょう」という仕上げの一言が聞きたかったのだ。ところが答えは仰天するものだった、なんと「あなたは勝てません」なのである。

 さあ、そう言われると気になってくる。何をもって自分が勝てないと感じたのか。すると米長夫人はこう言ってのけた、「あなたには全盛時代にくらべて欠けているものがある」。

 いったい何が欠けているのか。酒は飲んでない。将棋に対する情熱もそうとうに回復した。しいていえば前立腺癌が治っていないことくらいではないか。しかし、そんなことで「勝てない」とは言えまい。そこでおそるおそる聞いてみた。

 すると夫人は世にも恐ろしいことを言ったのだ、「全盛期のあなたと今のあなたには、決定的な違いがあるんです。あなたはいま、若い愛人がいないはずです。それでは勝負に勝てません!」。

 ガーン、ガーン、である。それではお言葉に甘えてとも言えないし、そんなことよりこの問題と自分が最後の勝負に出ようとしていることが緊密につながっているという意外な脈絡にショックを受けた。しかし、夫人の予想通り、米長は愛人を作らず、コンピュータを相手にして、そして敗れ去ったのである。

 その後、米長は夫人の言葉の意味を「あなたはね、ナーバスになりすぎたのよ」という意味に解釈するようにしたそうだ。

<ココまで>

1月に対戦し、この年の12月、米長さんは亡くなりました。まさに死ぬまで勝負師。合掌。

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